誰にも届かぬ歌を
僕と優太は、会場のステージに立っていた。スポットライトが眩しい。
「…あいつら何をする気だろ」
優太の学校の人たちは興味津々な目を、僕の学校の人たちは不快な目をそれぞれ向けていた。
「…俺とこいつで歌を歌います…」と優太が言うと、優太の友達は「お!優太が歌うのか!」と。僕の学校の人は「は?鈴音くんが?」と言ってざわついた。音楽が会場中に響く。
「凍てついた心 心を溶かす光
それは身近にある それを気づかない僕
輝く君が 羨む僕に 光をくれた
僕はずっと暗い場所にいた
君はずっと輝いていた
それが羨ましくて…
心に咲く花は いつしか枯れる
けれど、強く咲き続けられたのは
君のおかげ 君が僕に光をくれた
ありがとう 君に贈る感謝の歌」
僕と優太が歌い始めると、騒がしかった会場は静かになった。それは、歓声や手拍子となってまた騒がしくなる。
「もしも、君がいなければ
僕は生きていられなかった
苦しくて 辛くて 前を向けなくて
儚い桜のように 散っていただろう
ありがとう 僕が君に歌う
ありがとう 君がいれば
僕は前を向いて歩いていけるから」
僕の高音と優太の低音がきれいに重なっている。歌い終わり、頭を下げると拍手が起こった。
「…話は変わりますが、鈴音の学校に通っている皆さん」
優太がいつもよりも低い声で言った。僕の名前に反応したクラスメイトを優太が睨みつけた。
「ふざけるなよ。鈴音は、俺の大事な…かけがえのないものなんだ!…だから、鈴音をいじめるな」
僕は優太の言葉に「…え?」と本気で驚いていた。優太は、僕に優しく微笑んだ。