銘柄
/week.2
青々とした街路樹を見上げながら、いつものように足を進めていく。
地面を覆うのは、アスファルトとは似ても似付かない沢山の粗い粉末からなる土。
いつから、なんて分からない。
一週間に一度の休みの日、私は決まってこの公園に足を運ぶのだ。
「……あれ」
今日も、先客が居た。
「お兄さん、なにやってんのー」
「あ、お姉さん」
両膝に手を添えて、しゃがみ込んでいる男と同じ目線に変えてみる。
名前も知らない彼を呼べば、はにかんだような表情で笑みを乗せる姿が印象的で。
「猫がさ、いたから」
広い背からちらりと見えたのは、小さくて愛らしい子猫だった。
「なに、野良猫?」
「うーん、たぶん」
「ふうん」
ちらり、視線を落とせばにゃあと鳴く声が心を擽る。
思わず頬を緩めて見つめていれば、斜め上から感じる視線にハッと振り仰いだ。
「……なんでしょうか、お兄さん」
「んーん、俺のことは気にしなくていいよ?」
「いやいや、気になるでしょうよ」
そりゃ、見られていればさ。