銘柄
「そう?気になる?」
「うん、かなり」
「そんなに?」
そこでクスリ、妖艶さを孕んだ笑みを濃くした彼は。
「だって、お姉さんがすっげー可愛くて」
やっぱり、そんな冗談で私を揶揄するから堪らない。
「、――…!」
面白おかしくその発言を流せるほど、恋愛経験が豊富な訳じゃないから。
真っ赤になって顔を背けた私に気が付いている筈なのに、敢えてそのことには言及しない男。
そんなところが何故だか、比べるまでもないと言われている気がして少し癪だった。
「先週教えたやり方でやってみた?」
「…、……なにを?」
「煙草だよ、たーばーこ」
「あー…、うん」
私がこんなに動揺していること、知っている癖にさ。
わざと触れないで別のことを話し始めるあたり、ちょっと憎らしい。
「でも苦すぎて全然、私には無理だったよ」
憧れた"大人"には、まだ遠いみたいだ。