銘柄

/week.3







「――ちゃん、いつもありがとうね。若いのに頑張るね~」

「あはは、おじさんも無理しないでくださいね」

「おうよ!でも生涯現役目指すよ」

「それはちょっと頑張りすぎですよ~」



古くから取引先として親交のある、居酒屋のおじさんと談笑する。

そんな中でもトランクを閉めたりと手は忙しなく動かし、漸く出発の準備が整うと改めておじさんと向き直った。






「おや、新車かな?親父さんが使ってたのは?」

「……うん、さすがにもう古くて。私の好みに合わせて買って貰ったんです」

「そっか、そっか。あのトラックももう、何十年も働いたもんなあ。新しい軽《けい》も可愛らしくていいじゃないか?よく似合ってるよ」

「わ、ありがとうございます!」




真新しい車を前に頷くおじさんを見て、思わず顔が綻びた。

そんな私の様子を認めて、もう一度深く頷いたおじさんは口を開く。







「とにかく、これからもよろしく頼むよ!酒屋さん」

「こちらこそ、飲み屋さん」

「あはは、飲み屋さんって言うなよ~」






< 13 / 74 >

この作品をシェア

pagetop