銘柄
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「――ちゃん、いつもありがとうね。若いのに頑張るね~」
「あはは、おじさんも無理しないでくださいね」
「おうよ!でも生涯現役目指すよ」
「それはちょっと頑張りすぎですよ~」
古くから取引先として親交のある、居酒屋のおじさんと談笑する。
そんな中でもトランクを閉めたりと手は忙しなく動かし、漸く出発の準備が整うと改めておじさんと向き直った。
「おや、新車かな?親父さんが使ってたのは?」
「……うん、さすがにもう古くて。私の好みに合わせて買って貰ったんです」
「そっか、そっか。あのトラックももう、何十年も働いたもんなあ。新しい軽《けい》も可愛らしくていいじゃないか?よく似合ってるよ」
「わ、ありがとうございます!」
真新しい車を前に頷くおじさんを見て、思わず顔が綻びた。
そんな私の様子を認めて、もう一度深く頷いたおじさんは口を開く。
「とにかく、これからもよろしく頼むよ!酒屋さん」
「こちらこそ、飲み屋さん」
「あはは、飲み屋さんって言うなよ~」