銘柄
/week.4
じゃり、と砂の感触を確かめながら歩を進めていく。
視界に映る遊具は誰に使われることもなく、物静かにその場に佇んでいた。
時刻は夕暮れ。
少しいつもよりも遅めに公園へとやって来た私は、園を囲うように茂っている街路樹を見上げていた。
橙と藍の混じり合う色が、青々と葉を揺らす木々に溶け込んでいて。
呼吸を深くして気分を落ち着けていれば、他の人間の気配を感じて薄く瞳を開いた。
「お姉さん、遅かったね」
「……別に、約束してたわけじゃないよ」
ね?ほら、やっぱり。
例に洩れず黒っぽいリクルートスーツを身に纏った男は、はにかんだような笑みを浮かべながら此方に歩を進めてくる。
「…、……」
それをそっと尻目に見ながら、隣に立ち並んだ男に改めて視線を戻した。
「そうだけど、お姉さんはまた来るって思ったから」
「…凄い自信」
「でも、そうでしょ?」
それは、まあ。
私はお兄さんと出逢う前からこの公園に来ていた訳だし、間違ってはいないのだけれど。
改めてそれを口にするのは何だか癪で、やめておいた。