銘柄
「え、嘘!どこで!?」
「……物凄い慌てっぷりだね…」
「いやいや、そういう訳じゃ…!…、でも何処で…?」
そんなに気になるのだろうか。
と言うか、もしかしてあの女の人との関係を露呈したくないのかな…?
「大丈夫だよ、相手の女の人の顔は見てないから。安心して」
「は、え、女…?」
「ハエ?まだそのネタ引っ張るの?」
思わず眉根を寄せてそう言葉にした私を見て、ハッと思い起したらしい彼は首を振って否定を示した。
え、違うの?
そんな思いを込めて彼を見据えていれば、徐に唇を開いた男は言葉を落としていく。
その表情は何故か、安堵したようなそれに見えて不思議だった。
「もしかして、俺が女とラブホに行くとこ見た感じ?」
普段はさ、然して気にも留めないのだけれど。
こういう話題を口にする彼は、とんでもなくチャラ男に見えてしまうから扱いづらい。
「……ごめん、ちょっと私今日は帰るね」