銘柄
第1章 : 嚆矢
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「ありがとうございましたー」
愛想のいい店員の声を背に、ゆっくりと外に踏み出していく。
季節は梅雨。
幸い曇り空に転じた今日は、予報によると雨が降らないらしい。
「……ほんとかなあ」
物凄く不安。今にも泣き出しそうな空を見上げていると、予報なんて嘘なんじゃないかと疑いたくもなる。
軽いビニール袋をゆらゆら、と。
手持ち無沙汰に揺らしながら、目的の場所へとゆっくり向かっていく。
昨日まで降り頻《しき》っていた雨の影響で路面は濡れていて。
少しだけ沈下し、水の溜まっているところを選んでレインブーツで踏み締めて歩く。
視界に入り込んできたのは、見慣れた公園だった。
それは当たり前のことで、特段私が驚くこともない。
だって、コンビニを出てからずっとこの公園を目指し歩を進めてきたのだから。
「…、……」