銘柄
偶然出逢ったその男は、この上なく秘密主義者で。
名前さえも教えてくれない。
でも、
この曖昧な逢瀬が"約束"へと変わった瞬間は確かに存在した。
「俺さ、一番好きなものも一番嫌いなものも"女の子"なんだよね」
「……どういうこと?」
「自分でも分からない。すっげー可愛く見えるときもあれば、視界にも入れたくないときもある」
貴方はその言葉で、私をとことん縛り付ける。
「でもさ、お姉さんと居るときはいつも安心する」
そんな優しさに期待していた私は、言うまでもなく滑稽だったのかもしれない。