銘柄
第2章 : 逼迫
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「いってきまーす」
「あ?どこ行くんだよ」
「…、公園だけど?」
怪訝な顔つきを隠そうともせずに男を見上げると、そんな私の様子を流し目で一瞥した奴は薄く口を開く。
「仕事は」
「休みですけど」
「俺のメシは」
「知らないっつーの!」
オラオラと詰め寄ってくる男を慣れた動作であしらう私。
思わず吐き出した溜め息は必然だろう。
「……、…なんで帰ってくるかな」
手の甲を額に寄せて再度深く息を吐き出すと、見るからに気分を害したらしい男は更に低い声で唸りを上げた。
「お前、兄ちゃんになんつー態度取るんだよ…!」
ほーら、始まった。
そういう意を込めた瞳でゆるりと睨み上げれば、わなわなと震える男――もとい兄は続け様に言葉を落とし始めた。
「俺の親友の嫁さんなんかな、超可愛いんだぞ!少しは見習えよ!」
「知らないし。てか、そんなんだから何時までたっても結婚できないんだよ」
「てめェ……!」
「はいはい、じゃあね」