銘柄
「…、……」
「……」
「……」
「……えっと…」
あはは、なんて首裏に手を添えて笑みを貼り付ける私。
そんな怪しさ満開の此方の様子を確認した彼女たちは、と言うと。
「ちょ、早く行こう何かヤバいって…!」
「あたしら何かしたっけ!?」
「恐い恐い恐い…!」
小声で言っていたのだろうけれど。
その会話だだ漏れ、なんだけどなあ…。
顔を青くして走り去っていく彼女たちを呆然と見つめた。
え、私何かした…?
思わずその場に立ち竦んだあと、徐に鞄へと腕を伸ばして手鏡を取り出した。
「…、……」
……ああ、成る程。
原因は私の血色の悪さにあると見た。
年中通して「血、通ってんの?」と突っ込みを受けそうな顔色を晒していることは自覚している。
だからいつもはファンデやらコンシーラーやらでカバーしているのだけれど、奇しくも今日は失念していたらしく。
「絶対に持ってきてない気がする……」
僅かな希望を胸にカバンの中身を物色するも、やはりメイクポーチらしきものは見当たらない。