銘柄
/week.6
幸いこの日は天候に恵まれ、からりと日が差す中をゆっくり進んでいく。
先週とは違い茶色く染まった髪を風に揺らし、不慣れなメイクを施した状態で閑静な住宅街を縫って歩みを進めていく。
「…、……」
やっとのことで辿り着いたのは近所の公園。
先週、一度家に戻ったことで生じたタイムラグを悔いていた私は、今度こそはと早めに足を進めてきた。
筈、だったけれど。
「おねーさん」
「、……あ」
「なに、なんか今日雰囲気違うね。可愛い」
以前のあの日と違わず、この男は先にこの場に溶け込んでいて。
ベンチに腰掛け長い脚を放り出していた彼は、顔だけ此方にゆるりと向けて穏やかな微笑を浮かべる。
「……それって、」
「ん?」
「いつもは可愛くない、って言われてる気分なんだけど」
男が腰を下ろすベンチの正面に仁王立ちし、両手を腰に添えて訝しげな表情で相手を上から覗き込んだ。