銘柄
思い切り顔を背けた様子から見ると、それは"怪しい"行動だったのかもしれない。
――けれど、
「高卒で働いてる私だって、大学や院を出た人間から見れば"道が外れた"存在だよ」
「………、」
「でも、私はこの仕事に満足してるし何より誇りに思ってるから」
そんな彼の行動に言及するほどの勇気も無ければ、未だそこまでの関係を築いた訳じゃない。
結局は、逃げだ。
何時だって私は"お兄さん"に関することには敏感で、鈍感で、臆病だ。
この時はまだ、彼の思考の1ミリだって理解出来てはいなかったけれど。
「――、さんきゅ……」
呟くように発されたソレが、私の意見や行動に否定的な意味合いを持っていないことは伝わったから。
今はこれで良いのかな、なんて。
思いながら晴れ渡った空を仰ぎ見たんだ。