銘柄
/week.7
――その日は、珍しく私が先着で。
しゃがみ込んで何時かの野良猫を見つめていると、鼓膜に届く足音にふっと笑みを洩らした。
「今日は私が先だったね」
「………」
「お兄さん?」
ふらりと公園に姿を現した彼を認めて声を掛ければ、返ってくる筈の声音が無いことを不審に首を傾げた。
と、そのとき。
「、わ…!」
「ごめ、ん」
倒れ込むように此方に近付いたと思えば、止まる様子もなくそのまま恐ろしいほどの体重が襲ってくる。
身体全体で受け止めるようにして、なんとか地面との接触は免れたことに安堵した。
「ちょ、どうしたの!?」
「……、…」
「具合悪いの…?」
苦しげに吐き出される息に眉根を寄せてそう零せば、まるで同調するように彼の呼吸が一瞬詰まる。
顔毎すれ違うように向きを違えている為その表情は確認出来ず、なんとか腕をまわすことで男の額の体温を窺った。