銘柄
……え、
もしかしてそれって人並み以下なんじゃ…。
胸中自問自答を繰り返す私は余所に、眼前で横たわるお兄さんの表情は痛痒のそれに変わっていて。
「――…、もう!」
悩んでいる暇があったら行動に移せ!
勢いに任せてタオルを絞って水分を桶に出しきると、そのままの流れでお兄さんの服に手を掛けた。
途中、先に服を脱がせてからタオルを絞ったほうが良かったと早々後悔に苛まれたけれど。
でもいやしかし、こんな状態になったからには突き進むしかない!
ほぼ混乱したまま彼が身に纏うリクルートスーツに手を伸ばし、無我無心でそれを引き剥がしていった。
「(……、もうちょっと…!)」
無我無心といったら語弊があったかもしれないけれど。
――と、そのとき。
「え……?」
勢い良くスーツを引き剥がしていた自らの手は完全にストップし、目の前の光景を理解するのにワンテンポのズレが生じた。
でも、段々と鮮明に、ソレは私の目に飛び込んでくる。