銘柄





思い切り眉尻を吊り上げてそう口にする私なんて余所に、次の目的地へと向かい出した奴にほとほと呆れた。

て言うか、自分から言い出したんだからそっちが車を出すのが普通じゃない?




なーんて胸中で目一杯不満を洩らしてみても、これを直接ぶつけたところで奴に効くかというと別の話。

私の言葉なんて近くで蚊が鳴いているくらいにしか捉えないんだから。






と、そのとき。


「あ、やっべぇ。走るぞ」

「はあ?なんで私がそんなことしなきゃいけな――」

「四の五の言ってねぇで行くぞ」

「あ、ちょっと!?」






急に走り出した兄貴にギョッと目を見張りつつ、慌ててその背中を追う私。

ここで置いてけぼりを食らったら何のために此処まで来たのか分からないじゃん!




反論は奴が立ち止まったときのために取っておくことにして、今は全速力で追い掛けることに専念した。











――――――――――――…




わいわい、がやがや。

異様だと認めざるを得ない光景に目を丸くしながらも、小さな街で唯一繁華な通りを渦巻く喧騒を縫って進んでいく。




「ちょ、兄貴…!」





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