銘柄
又しても悪役のように零される台詞に、内心余っ程頭を抱えたい思いだった。
俺様気質で私の手を引くのは言わずもがなあの兄貴で、
「ちょっと…!」
痛さを感じることは無いにしても、強引過ぎるその行動はある意味称賛に値する。
引っ張られる勢いもそのままに懸命に兄貴の背中を追っていれば、
「お、丁度だな」
「ふぎゃッ」
「はあ?何だよお前、鈍臭ぇなあ」
お前がいきなり立ち止まるから背中にぶつかったんだろ!
瞳をギン!と滾らせて怒りもそのままに口許を引くつかせていたが、奴はそんな此方の様子は気にも留めていないらしい。
「ほら、前見とけよちゃんと」なんて飄々と抜かすその口を針で縫い合わせてやりたくなった。
しかしながら、兄貴のみに意識の全てを集中させていた私は。
「――…え……?」
目の前を颯爽と通り抜けていった一台のバイクに目を奪われることになる。