銘柄





目を見張るほど大きな車体と、黒々と煌びやかな光を放つフォルム。

熱狂の渦に巻かれる観衆の視線を一挙に浴びながらもその姿は清々しいほどに堂々としていて、何時もは黒い髪に一筋金色のメッシュが存在を主張していた。




時間にしてほんの数秒。

けれど彼の居たあの空間だけはスローモーションのように私の瞳に映り込み、何時までもその残像は消えて無くならない。




「――見たか?」

「…、……うん」



充分だった。

その一言だけで、交わすには、兄貴の言葉の意味を理解するのには事足りてしまったから。






嗚呼、私は。


「きゃー、――!!もうやばいカッコ良すぎるって!」

「あたしもう一回裏まわってくる!」

「総も――もカッコ良すぎるっての!」








この小さな街では異端とも取れるほどに有名で、


"道外れた奴って――、"

"――…、さんきゅ"





それでいて純粋過ぎるほど自らの道に真直ぐな男と出逢ってしまった、みたいだ。





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