銘柄





「――…ッ、」


その箱を反転させた私は直ぐに言葉を無くした。










"これ、本当はそんなに好きじゃないんだ"


―――"俺のと同じ銘柄。これ好きなんだよね"






別に私自身が言われた訳じゃないのに。

まるで本人から直接"好きじゃない"と言われた気がして、胸が針で刺されたかの如くずきんと痛む。









虚言を告白する細い文字を指で撫ぜれば、黒いそれは直ぐに散り滲んでしまった。





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