銘柄
嗚呼――、失敗したと思った。
叫ぶように言葉を落としていた私は直ぐに口を噤み、決まりが悪い具合の表情を晒して下唇を噛む。
「へぇ?アンタ名前も教えて貰ってないんだ」
「ふふっ、可哀相ォ」
「じゃあさ――」
「この場でアタシ達からアイツの名前聞く程、屈辱的なことって無いよねぇ?」
背筋を、戦慄が走り抜けた。
――――――――――…
バタン!勢い良く自室の扉を閉め、乱暴にコンビニ袋をテーブルの上に放り投げる。
止め処なく頬を濡らす涙を拭うこともせずに直ぐ様ベッドに身を投げ出した。
「――…、……」
"忘れんじゃないよ"
"アタシ達だってアイツの"お古"なんだ、アンタだってその内飽きられてお終い"
"ウチらなんて序の口なんだから――もっと、《いっぱい》居るよ?"
頭の中で響き続けるのは、あの子たちの痛すぎる言葉の数々。
そして繰り返し脳裏をチラつくのは――、
"もしかして、俺が女とラブホに行くとこ見た感じ?"
お兄さんが見知らぬ女性と腕を組んで街中を歩く、あの姿だった。