銘柄

/おまけ







「おーい、もう入っていいか」


そんな言葉をおとしながらも、無遠慮な兄貴はガラガラと引き戸を開けて居間に入り込んでくる。

何もかもはかったようなタイミングに半ば愕然としながらも、ふと重なった視線の先で兄貴が凄んでくるから私も睨み返してしまう。






――――でも、



「その、さっきは……ごめん」

「あ?」

「余計だって言ったの。取り消す」






おずおずと言葉にした私は、少なからず先ほどの言葉を悔いていたから。

あんなことを言われたら誰だって気分を害するに決まってる。それが例え、血を分けた兄妹だとしても。


しかしながらそんな私を一瞥した男は、フンと鼻息を荒くすると。





「てめぇはウブちゃんだからな。和也みてーなヤリチンを大人しく躾られるとは思えねぇけど」

「ちょっと兄貴!」





そこでニヤリ、口角を上げた俺様主義者は私の頭を鷲掴むと。




「ま、精々がんばるこったな」








私たち二人を企み全開の面持ちで交互に見比べて、そんな言葉をおとすに至る。

しかしながらその台詞を言い終える前にあることに気が付いたらしい男は、眼下の私を一瞥すると。



「妹よ」

「なに」

「コイツ高3なんだけど。お前、年下好きだったのか」

「は?」






思わず目をテンにして黒髪のプレイボーイ二人を見比べる。

いま何か、衝撃的な発言を向けられたような。



「あれ、葵言ったじゃん」






キョトンと目を丸くする和也くんを呆然と見遣る私。と、視界の隅っこで腹を抱えて笑い転げるクソ兄貴。



「お兄さんって就活中なんですかー、って」










      そ う い う こ と か

    ( 葵と和也は二歳差カップル )



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