剛力家の三兄弟
第4章 耐えきれるのか?
剛力家の朝は早い。
真奈美の起床時間は5時だ。
うぅ…寒い…
新聞配達よりも早いなんてありえないでしょ?
ああ、本当だったら今頃ホテルのベッドで、弘樹の腕の中だったのに…
私いつ迄持つかな?
私、本当にあの三人の誰かと結婚するの?
お互い好きでもないのに?
まぁ結婚は別としても、頑張らないとお金もないし、行くところないからな…
「おはようございます」
台所に入ると、住み込みお手伝いの美代子さんが食事の支度を始める所だった。
「おはようございます。
真奈美さん昨夜はよく眠れましたか?」
「それが…あまり眠れなくて…」
あまりどころか、本当は全然眠れなかった。
枕が変わろうと何処でも眠れる私が、昨夜は一睡も出来なかったのだ。
ここは高級住宅街に在る古い大きなお屋敷で、門から家屋迄の距離は結構ある。
その為、真奈美が今迄居た社宅と違って、外を走る車などの騒音は一切聞こえない。
真奈美が使わせて貰った部屋は50畳はある奥座敷で、そこに布団を一枚敷いて一人で寝たのだ。
シーンと静まりかえった部屋に、時折聞こえるカッカッカッという音。そして、ハァ、ハァ、ハァと言う音に真奈美は一晩中怯えていた。
「あらまぁそれは辛いですね?
お食事の時間迄、まだ時間が有りますから、
少し横になってらして下さい。
支度は私一人で大丈夫ですから」
そうしたいところだが、そんな訳にいかない。
あのオバサンに、昨夜、『明日から、朝5時に起きて食事の用意を手伝う様に』と言われていた。
もし、サボった事がバレたら何を言われるか分からない。
もしかしたら、ここを追い出されるかもしれない。行くところのない私は、何がなんでも、今はここに置いて貰うしかないのだ。
「いえ、大丈夫です。
あのオバサン怒らせると怖そうだから、
1日や2日寝なくても平気です!」
若いですからと笑って居るとミシ、ミシと、音がしてきた。
「その怖そうなオバサンとは誰の事ですか?」と、真奈美の背後から緩急のない声が聞こえてきた。
あ…
美代子はクスッと笑い、真奈美の背後へ「おはようございます」と挨拶をした。
恐る恐る振り向くと、真奈美の思った通りの人が居た。真奈美は慌てて「おっおはようございます!」と活きよいよく頭を下げた。
すると「おはようございます。二人ともご苦労様」と法子は挨拶を返した。
ふぅーヤバイヤバイ 気を付けよう。