剛力家の三兄弟
第2章 誰でも良いから、助けて!!
遡ること1時間ほど前。
真奈美は真冬の寒空の下、ひとり街を歩いていた。
街も、行き交う人々も、全てクリスマスムードに浮かれている。
そんな中、真奈美はキャリーバッグと、あの有名テーマパークの大きなショッピングバックを肩に掛けて歩いていた。
周りから見たら、たった今テーマパークから帰って来た人に見えるだろう。
現にすれ違う学生であろう女の子達からは『あーいいなぁネズミランドに行って来たんだね?』と羨む声が聞こえてくる。
だが、当の本人は俯き、悔しやと悲しさで疲れきっている。勿論、真奈美は夢の世界から帰って来た女ではない。
「寒い…」
昨日、上司に啖呵を切ったものの、住んでいた所は会社の寮。会社を辞めたのなら、早々に出て行かなくてはならない。
だが、貯金も殆どなくアパートを借りるにもお金がない。暫く友達の家に厄介になろうと、何人かに電話をしたのだが、日が悪かった。
今日はクリスマスイブ、相手のいる人はもちろんデート。居ない人は居ない人で、合コンや女友達と旅行などの予定を組んでいる。もとより真奈美もそうだった。
昨日までは…
「でも、どうするかな…」
2、3日ならビジネスホテルでも良いが、その後の見通しがつかないのに、お金は使いたく無い。取り敢えず、今日は24時間営業のファーストフード店で、この寒さを凌ごうかと考え歩いていた。
(ドン!)
キャッ!
痛ーい…