カラフル
『まあ、本音言えば、あんなに飲んだくれで荒れてる土師っちをあたしがどうにかしてあげたかったけど。……じゃ』
順は一緒に住んでて、セックスもするけど。付き合ってる、って訳じゃ……。
家や仕事が決まれば出て行くだろうし、彼女だってすぐできるだろう。
出会って半年。まだ浅い。
あの心地よさに深入りする前に、見切りつけた方がいい、のかも。
「あっ、でもね、重く考えないでね! ただ会ってみるだけでいいのよ? 軽い気持ちで。どう?」
両手をぱちんと合わせ、奥瀬さんは控えめに首を傾げた。
それからスピーディーに事は進んだ。
奥瀬さんは所長と息子さんに連絡を取り、馴染みのレストランに予約を入れ、わたしの服装に口出しした。
若いときに着ていたというワンピースを着せられそうになったけど、なんとか固辞した。変な藤色を着るのはどうしても嫌だった。
「奥瀬で予約してあるから。息子は職場から真っ直ぐ行くそうよ」
謎のガッツポーズを披露され、狼狽しながら奥瀬さん宅をあとにする。
所長から電話がきていたので折り返すと、「弱ったことになったね」と困惑した声で言われた。
「奥瀬さんには私からはっきり断りますよ」
と提案してくれたけど、もうあとに引けない状況だった。
もちろん、本気でお見合いしたいなんて思ってないけど。正直自分のことしか喋らない奥瀬さんの話の腰を折ってまで断るのもなんかもうめんどくさかったのもあるけど。
順があの部屋からいなくなったあと、ひとりぼっちになるのは嫌だった。
途方に暮れる自分が容易く想像がつく。
「大丈夫です、所長。一度お食事すればきっとわたしなんて、奥瀬さんの方からお断りされると思いますし」
自虐的に言って、わたしは予約されたレストランに向かった。今日は社用車を他で使用してるから、電車で来ている。
ご主人の生前に家族でよく利用していたレストランは、駅の近くだった。
順は一緒に住んでて、セックスもするけど。付き合ってる、って訳じゃ……。
家や仕事が決まれば出て行くだろうし、彼女だってすぐできるだろう。
出会って半年。まだ浅い。
あの心地よさに深入りする前に、見切りつけた方がいい、のかも。
「あっ、でもね、重く考えないでね! ただ会ってみるだけでいいのよ? 軽い気持ちで。どう?」
両手をぱちんと合わせ、奥瀬さんは控えめに首を傾げた。
それからスピーディーに事は進んだ。
奥瀬さんは所長と息子さんに連絡を取り、馴染みのレストランに予約を入れ、わたしの服装に口出しした。
若いときに着ていたというワンピースを着せられそうになったけど、なんとか固辞した。変な藤色を着るのはどうしても嫌だった。
「奥瀬で予約してあるから。息子は職場から真っ直ぐ行くそうよ」
謎のガッツポーズを披露され、狼狽しながら奥瀬さん宅をあとにする。
所長から電話がきていたので折り返すと、「弱ったことになったね」と困惑した声で言われた。
「奥瀬さんには私からはっきり断りますよ」
と提案してくれたけど、もうあとに引けない状況だった。
もちろん、本気でお見合いしたいなんて思ってないけど。正直自分のことしか喋らない奥瀬さんの話の腰を折ってまで断るのもなんかもうめんどくさかったのもあるけど。
順があの部屋からいなくなったあと、ひとりぼっちになるのは嫌だった。
途方に暮れる自分が容易く想像がつく。
「大丈夫です、所長。一度お食事すればきっとわたしなんて、奥瀬さんの方からお断りされると思いますし」
自虐的に言って、わたしは予約されたレストランに向かった。今日は社用車を他で使用してるから、電車で来ている。
ご主人の生前に家族でよく利用していたレストランは、駅の近くだった。