カラフル
Q
玄関のドアが開く音がして、しばらく、ドカッ、ドサ! バタ、という効果音が続いた。
「なにしてんだ? あいつ……」
わたしは座ったまま首を伸ばしてその音がした方を見るが、磨りガラスのドアで遮られているので見えない。
とりあえず、首を捻る、というありきたりなジェスチャーを誰にともなく披露して、わたしは読みかけの漫画に再び目を落とした。
「おーい」
ページをめくろうとしたとき、今度は間延びした声がした。
順の声だった。
「奈津ー、手伝ってくれー」
えー、今すっごいいいところなのに。
主人公とイケメン上司との親密な仲に妬いた同期が理性なくしてここがオフィスだってことを忘れてガンガン攻めてくるっていうね、一番の盛り上がってるとこなのにっ!
「奈津ー、早くしろー」
「……へいへいへい」
わたしは半ばヤケクソで漫画を閉じると、うんざりなため息交じりに立ち上がった。
「腕がもげるー」
?
「床が抜けるー」
は?
「もー、なによ。どうしたのよ」
わたしは呆れた声で言いながら、昭和でレトロな崩れかけのアパートの、趣味の悪いアマガエル色のドアを開ける。
すると。
「……なにこれ……どしたの」
玄関のたたきで順は、スニーカーを脱げずにもがいていた。
玄関のドアが開く音がして、しばらく、ドカッ、ドサ! バタ、という効果音が続いた。
「なにしてんだ? あいつ……」
わたしは座ったまま首を伸ばしてその音がした方を見るが、磨りガラスのドアで遮られているので見えない。
とりあえず、首を捻る、というありきたりなジェスチャーを誰にともなく披露して、わたしは読みかけの漫画に再び目を落とした。
「おーい」
ページをめくろうとしたとき、今度は間延びした声がした。
順の声だった。
「奈津ー、手伝ってくれー」
えー、今すっごいいいところなのに。
主人公とイケメン上司との親密な仲に妬いた同期が理性なくしてここがオフィスだってことを忘れてガンガン攻めてくるっていうね、一番の盛り上がってるとこなのにっ!
「奈津ー、早くしろー」
「……へいへいへい」
わたしは半ばヤケクソで漫画を閉じると、うんざりなため息交じりに立ち上がった。
「腕がもげるー」
?
「床が抜けるー」
は?
「もー、なによ。どうしたのよ」
わたしは呆れた声で言いながら、昭和でレトロな崩れかけのアパートの、趣味の悪いアマガエル色のドアを開ける。
すると。
「……なにこれ……どしたの」
玄関のたたきで順は、スニーカーを脱げずにもがいていた。