カラフル
順がトイレに行った隙に、わたしは順が愛用している座椅子にドカッと座り、あぐらをかいた。
テーブルの上で開きっぱなしになってるノートパソコンは、スリープモードになる寸前だった。


「…………」


ほんと、最悪。

パソコンでなに調べてんの? なんて、何気なく聞くんじゃなかった……。

午後になり、わたしたちは部屋を出て、商店街の方に向かって歩いた。
外食する気分じゃなくなったので、スーパーに買い物に行くことにした。


「夜ご飯、なににする?」


ピンクの籠を持ち、わたしは野菜売り場を歩きながら後ろにいる順に聞く。


「鍋にしよっか。ちょっと贅沢に海鮮とか入れて」


ちらりと肩越しに振り向くと、順はきょとんとした顔でわたしを見返す。


「ど、どうしたの? なにかのお祝い?」
「別に。バイト代入ったからさ」


白菜やネギを籠に入れ、わたしはスタスタ歩き出す。


「シメはラーメン?」


後ろから追ってきた順が、重みを増した籠をヒョイッと取り上げた。


「うーん、今日はうどんがいいな」
「奈津、バイト楽しい?」
「うん、楽しいよ」


肉売り場で、豚にするか鶏にするか迷ってたわたしは、「なんで?」隣からじーっと向かってくる視線を感じて訝しげに聞いた。


「いや、なんか。初めて会ったときも、仕事が好きって言ってたから。そんなに楽しいのかな、って。思ってね」


豚バラ肉のパックを手に取り、順は首をすくめた。
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