カラフル
「コタツ。貰ったの!」


天板がちょうど、順のスニーカーの爪先を潰してるらしく、それから脚やらコードやらが行き先を阻んで身動きがとれないらしい。
それなのに順は嬉しそうに言った。


「奈津、ちょっとそっち持って!」
「え! な、な、」


っていうか、え。
そのままむき出しのまま、歩いて持って来たの?


「なにをやってくれてんの⁉︎」


素っ頓狂な声で言い、でもわたしは反射的にコタツの天板を持ち上げた。


「だって俺、なんかすっげ寒くてさぁ」


ようやくスニーカーが脱げ、片足ぴょんぴょんしながら順は大げさに弱った声で言った。


「ちょうど要らない、って奴がいたから貰ってきた! 俺風邪引いたのかも〜」


軽い口調で言い、洟をすする順をわたしは横目を薄めて見た。


「はぁ? だったら薬でも買ってくれば良くない? そこでなぜコタツ? つーか重」


というわたしの真っ当な意見に、順はただ口角をくいっと動かしやり過ごす。

玄関から引きずらないようになんとか頑張って持ち、居間に通じる薄緑色のドアを開け、体を細くして通過する。


「ねー、これ居間に置いたら狭くなるんだけど。電気代もかかりそーだし」


唇を尖らせて小言を言いながら振り向くと。


「ま、布団も貰い物じゃあんまりだからさすがに新品買ってきたぜ!」


後ろを支えてくれてると信用していたのに順は、まだたたきにいて、満面の笑みで布団が入っているらしい紙袋を持ち上げた。


「ってちょっと順! そっち持ってなかったのかよ!」


どうりで重いはずだわ。
怒りたい気持ちを通り越して、呆れた。
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