カラフル
「順一?」


鼻歌が、プツンと途切れる。
彼女を見て目をむいた順が足を止めたので、わたしもそれに倣う。


「葉子……」


当惑し、消え入りそうな小さな声で、順は彼女をそう呼んだ。
わたしに軽口を叩くときとは違う、憂いを帯びた濃い吐息が交じってた。

彼女がわたしを誰何する目が、なんかかなしそうで、すごく辛そうだった。
ああ、女の子と一緒なんだ、っていう残念さが、あからさまに伝わってきた。

どっちが何倍辛いなんて、比べるもんじゃないけれど。
わたしだって、かなしかった。

順は彼女と、「ちょっと行ってくる」と言い、それから帰ってこなかった。
ゆるい関係なんだから、姿を消すくらい造作ない、もんね。

わたしはとりあえず、なるべく冷静に生物は冷蔵庫に入れ、コタツにちょこんと正座した。


「エビ、安くなってたから賞味期限短いだろうな……」


ひとりで食べる気分になんてならなかった。

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