カラフル
「嫌な思いさせて済まなかったね、奈津美ちゃん。もう今後一切、こんなことは無いようにこっちとしても注意するから」
「い、いいえ……」


所長はまるでなにがあったか見透かしたように、弱り顔で言った。

そういえば順って、なんであのレストランに来てくれたんだろう。
あのとき詳しく聞かなかったけど。たまたま通りかかって、とか? 尾行してたとか。


「まさか、ね……」


事務所を出て、すっかり夜気に包まれた道を歩いていると、背後から足音が近づいてきた。
コツ、コツと。

ちょっと物騒なこと考えてたから、気になって振り返ろうとしたとき。


「こんばんは」


突然声をかけられて、両肩がビクッてなった。
強い香水の匂いが鼻についた。


「土師っち、家にいるよね?」


背後に立っていたのは、コタツをくれた女の人だった。こないだ順が、勝手に家に上げてた、派手めのファッションの人。
今日は、夜道に映える真っ白のダウンジャケットを着ている。


「い、いいえ……」


小声で答え、首を振ると。


「いないの?」


彼女は高圧的に言った。
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