カラフル
「いない、と、思う」
「なんで? どこ行ったの?」


非難するような声で、怪訝そうに眉を潜める。


「さぁ……わかりません」
「はぁ? わかりません、って……。いつ戻ってくるの?」


いつ?

そんなの、こっちが聞きたいよ。


『葉子……』


あの可愛らしい女性は、誰なの? って。


「もう、帰ってこないかも」


ずっと思ってたことを声に出して言ったら、心がその一番かなしい結末を認めて、両目が熱くなった。
心臓が凍っちゃったみたいに、痛くて苦しい。


「……っ……う……」
「えっ! な、なんで」


潤んだ視界のなかで、いきなり泣き出したわたしに狼狽える彼女の姿が映る。


「ちょ、ちょっと! どうしたの⁉︎」


俯いてぽろぽろ泣き続けるわたしの肩に、彼女は手をのせた。


「どうしたー? 大丈夫?」


一番恋しい温もりとは違うけど。
背中をさすってくれる手のひらは、きりきり凍える心に温かさを灯した。
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