カラフル
ひとりぼっちは、寂しい。
ふたりで過ごす、あったかさを知ってしまったら。

でも。


「ん……」


こくりと項垂れると、ひかるさんはわたしを元気づけるように、鼻にくしゃっと皺を寄せて笑った。

アパートの一階の部屋には電気が点いていたけど、うちには点いてなかった。
ひかるさんは「土師っちによろしく」と言って、帰って行った。


『じゃあ代わりに、今夜一晩泊めて』


半年前、仕事から帰ってきたら順は、一階の部屋の前でドアノブをガチャガチャやっていた。
前に住んでた人が退去して、清掃に入ったばかりだったので、完全に不審者だ、と思った。

なにしてるんですか? とか、警察呼びますよ、とかわたしは言った。
とっさに、所長に電話しよう、ともと思った。


『ここ、なんで鍵かかってんの』


順はベロンベロンに酔ってた。
覚束ない足元で、目は座っている。

自分のアパートと間違えてるのか? それとも、前に住んでた人の知り合い__?


『ここ、誰も住んでません』
『いや、そんなはずは……』
『ほんとです。空き家ですよ』
『いや、でも』


とっても酒臭い順が納得しないので、わたしはここに清掃に入ったから知ってる、事実だと伝えた。

すると。


『へえ、けっこう若くて綺麗な女の子が清掃とかしてんだ』


急に我にかえったように、順はまじまじとこっちを見て、真顔で言った。
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