カラフル
なんか、言い方が気に障ったので、わたしはこの仕事に誇りを持っている、と訴えた。
女だとか清掃だとか、偏見を持って言われたくなかった。

会社を辞めたばっかだったから、たとえ行きずりの酩酊状態の相手にでもそう主張しないと、気持ちを保てなかった、のかもしれない。不安定で。

それに、目を反らせないほど綺麗なのは、そっちの方だと真剣に思った。
酔っ払いのくせに順は、とても美しい顔立ちをしていた。


『とにかくここに住んでた方は退去されましたから。これ以上居たら警察呼びますよ』


わたしは駆け足で階段を上った。
ちょっと待って、と追いかけて来た順は、


『じゃあ代わりに、今夜一晩泊めて』


言い終えて、足元をふらつかせた順は玄関のドアにゴン! と体当たりしたかと思ったら、次の瞬間、もう寝ていた。


「……よく連れ込んだよなぁ」


自分でも、警戒心のカケラもないな、って呆れる。

ひかるさんを見送り、スローなリズムで階段を上る。


『でも、言ってたよ。〝ここがすげー気に入ってる〟って』


出会いのきっかけは怪しかったけど。今も進行形ですべてが怪しいけど。


『だから、信じたら? 土師っちのこと』


きっと慕われる人柄ではあったわけだし。
なんて、自分に言い訳をして階段を上りきり、二階に着いたとき。


「__おかえり。」
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