わたしを光へ。

そして不意に顔を上げた加賀くんと目が合う。


「何で…」


「え?」


掠れた声と、無機質な切れ長の瞳。


「何で出会っちまうんだよ…」


一瞬だった。


目の前には加賀くんの顔があって、唇に柔らかいものが触れたと思ったら、彼はすぐに私から離れて鞄を持って外へ出てしまう。


今、私は何をされた?


花那の、妹の彼氏に。


信じられない。意味が分からない。


いったい彼は何を考えて、思って、あんなことを?


私の顔を見て驚いていたことと関係があるの?


とにかく、これは花那には絶対にバレないようにしないと。


彼氏が自分の姉とキスしたなんて、これ以上ショックなことがあるだろうか。


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