わたしを光へ。


彼はまるで蜘蛛だ。



緻密に糸を張って、待ち構え、確実に相手を仕留める。



そしてそのまま離さない。



それなら私は光に憧れる蛾か。



洸という光を見つけて羽ばたこうとしたから、蜘蛛に捕まってしまったのか。



「美月なら分かるよね。ほら、行こう」



この物腰の柔らかさに呑み込まれそうになる。



でもこの男は危険だ。



絶対に危ない部分を秘めている。



頭では分かっているけど、体は恐怖で言うことを聞かない。



彼に着いて行くという選択肢しか私には残されていなかった。


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