わたしを光へ。


あのときとは違うと分かっている。



これは洸だと分かっているのに。



私の思考はそれに囚われて離れられない。



そうこうしているうちにも、洸の顔はどんどん近付いて来る。



これは洸なんだから何も怖がることはない、と意を決して目を瞑る。



三秒は経っただろうか。



覚悟していた感触は襲ってこない。



代わりに、ポンと頭に手が置かれた。



ゆっくり目を開けると、洸は少し眉尻を下げて笑っていた。



「ごめんなさ…」



彼と目を合わせているのが辛くて、下を向くと自分の手が震えているのが分かった。



震えを止めようと思うほど、焦って止められない。


< 146 / 301 >

この作品をシェア

pagetop