わたしを光へ。
あのときとは違うと分かっている。
これは洸だと分かっているのに。
私の思考はそれに囚われて離れられない。
そうこうしているうちにも、洸の顔はどんどん近付いて来る。
これは洸なんだから何も怖がることはない、と意を決して目を瞑る。
三秒は経っただろうか。
覚悟していた感触は襲ってこない。
代わりに、ポンと頭に手が置かれた。
ゆっくり目を開けると、洸は少し眉尻を下げて笑っていた。
「ごめんなさ…」
彼と目を合わせているのが辛くて、下を向くと自分の手が震えているのが分かった。
震えを止めようと思うほど、焦って止められない。