わたしを光へ。
外に出る寸前で、こちらを振り返った。
「あ、そうだ美月ちゃん。花那のことで、ちょっと話したいな」
さも思い出したかのように悠然と話しかける。
幹部の皆んなが見てる。ここで行かないと変に思われる。
それは分かっているのに、足が固まって動かない。
自分から蜘蛛の巣に捕まるような真似、誰だってしない。
ずっとこちらを見ている加賀くんの目尻が、細く歪む。
途端に蘇ったあのとき見せた激情が、鉛のように重い私の脚を動かした。
ゆっくり、加賀くんもこちらに向かって歩いて来て、2人の距離はどんどん縮まる。
今振り返って手を伸ばせば、洸に助けを呼べるのに、私を捕らえる加賀くんの目がそれをさせてはくれない。