わたしを光へ。
加賀くんはこのお店の勝手をよく知っているようで、奥の個室に私を連れた。
暗い照明が、お互いの顔がようやく見えるほどに照らす。
隣り合わせに座るとやっと肩の手が離された。
「ごめん、痛かったでしょ」
「此処に連れて来てどうするつもり?」
加賀くんが私の両手をそっと掴んで彼の手で包んだ。
その手は温かくて、目を瞑れば隣にいるのは加賀くんとは思えない。
「相澤に突き放されたとき、どう思った?」
その言葉であのときを思い出して、心が冷えるのを感じる。
正にあれは絶望だった。
「可哀想に。俺ならそんな思いさせないのに」
まだ何も返事していないのに、私の顔を見て全てを察したのかそんなことを言った。