わたしを光へ。

次の瞬間、少し口を開けてまた顔を寄せて来た彼は。



癒えた傷口を許さないとでも言うように、私の唇を喰い破った。



「い、た…」



狂ったほどにしつこく、深く口付けるのを止めない。



嫌でも感じる血の味が不快だ。



「美月、俺の名前を呼んで」



キスの合間にそんなことを言う。今更、私たちの間にそんなの必要…?



抵抗をするとお仕置きとでも言うようにその行為は激しさを増す。



「美月、はやく」



もうそれに優しさなんて無かった。



「…秀人、」



「ああ…可愛い。忘れないで、この傷が疼く度に俺を思い出して」



傷口はジンジンとその痛みを訴えているけど多分そんなに酷くない。



一、二週間もすれば完治するだろう。


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