わたしを光へ。


「相澤くん、そろそろ帰ってもいい?」


皆んなと談笑しているうちにあっという間に時間は過ぎて。


気付けばいつもの帰宅時間と変わらない。


「ああ。送ってく」


幹部の皆んなにも、下っ端の皆んなにも、いつでも来てって言われて、


本当に此処は温かい場所だと思った。


うっかり癒されてしまいそう。


「なあ美月」


隣を歩く相澤くんが不意に私の名前を呼ぶ。


今夜も月は綺麗に輝き、私たちを照らす。


「保健室のこと、覚えてるか?」


何を。


忘れるはずがない。


あの瞬間、あの場所で、彼は櫻木美月を打ち破ったのだ。


そんな時を、どうしたら忘れられるというのか。


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