わたしを光へ。
「洸」
いつも通り、美月を待とうと思っていた俺は廊下から呼ばれる声に振り向いた。
そこには鞄を持った美月の姿。
「今日、仕事は?」
「ないの。だから帰ろ」
いつもの如く柔和な笑みを浮かべている。
一年生の頃、美月の存在を知ったときはこの笑みに騙された。
だけど二年生になり、あの笑みは仮面なのだと気付いた。
胸の内を隠すための仮面。
俺も鞄を持って、美月と二人、学校を出る。
「このあと、予定ある?」
美月の仕事が終わるのを待つ筈だった俺に、予定などある訳がない。
「ないよ。どっか行く?」