わたしを光へ。

美月は夕飯のときも、そして今花那ちゃんの前にいるときも。


感情を出すことなく、微笑んでいたのだ。


自制心の塊。


家族の前でまでその胸の内を明かさない女。


いや、家族の前だから、なのか。


家庭の事情を知らない俺は、どうして美月がこうなったのかは分からない。


だけどその息苦しさは計り知れないだろう。


家族の前でまで、自分を押し殺すなんて。


一体美月はいつ、自分を解放しているのか。


美月が俺に縋った理由が分かった気がした。


仮面を被ってまで己の感情を隠すような美月が、どうして櫻木美月の内部を押し開いた俺と付き合ったのか。


本来なら今まで守ってきた櫻木美月という存在を脅かす俺を避けるだろう。


美月なら尚更そうする筈だ。


< 55 / 301 >

この作品をシェア

pagetop