その視界を彩るもの
イサゾーが怒ってくれるのは嬉しい。でも、解らない。
どうして少年はあたしをそんなにも目の敵にするんだろう?気に食わないなら、放っておけばいいのに。
もしかしたら少年はイサゾーたちの「敵」じゃ無いのかもしれない。
だって、《天龍》を擁護するような言葉を口にしていたから。それってつまり、イサゾーの仲間だってこと?
それにしては仲、悪すぎじゃない?
閉ざされた視界の中で胸中悶々と思案に暮れていたあたしは、その瞬間にあることを思い出す。
それは先日の夜のこと。イサゾーの家でお泊まりしたときに聞いた言葉。
――――いま《4番》の男と馬が合わないっていうか。あいつより下だと思われるのは嫌だっただけよ
あのときは「ふぅん」と返しただけだった。だって正直、あたしには関係ないことな訳だし。
って、ちょっと待って。イサゾーさっき何て言った?
『《3》明け渡した腹いせってか?とんでもねぇガキだな』
脳裏でどんどん導き出される答え。カチリと寸分違わずに填まったそれを前に、あたしは黙って目を瞑っていられなくなった。
だから強引にも明るい視界に身を投じる。
パチリと瞼を持ち上げて刹那的に射し込む光に僅かながらに瞳を細め、現状を把握しようと試みるものの。
「―――ちょっと待ってイサゾー!!」
『ッ、!?』
悠長に構えている余裕なんて直ぐに吹っ飛んだ。
今まさに、少年目掛けて殴り掛かろうとしていたイサゾーの腕に思い切り飛び付く。
そんなあたしの行動はイサゾーだけでなく少年に取っても不可解なものだったらしく、黒目がちの瞳を大仰なほど見開いていて。