その視界を彩るもの




万里少年は言っていた。

あたしがケバいから、イサゾー相手に媚びて近付いたんだと断言した。


その言葉を聞いたイサゾーはマジでキレた。

あれは本気で怒り心頭に発していた。だって凄みが半端じゃなかった。





『アイツが、アンタを見て呉れだけで判断したからよ』






それは紛れも無くイサゾーの本音。しかしながら、口に出されることは無くてあたしが耳にすることは無かった。

此の期に及んで仮面を剥いだ台詞をおとすことに躊躇した理由。

イサゾー自身の葛藤は解らない。

これ以上あたしに曝け出すのを踏み止まった所以は解らない。




ただ、何かあるならあたしは言って欲しかった。





< 110 / 309 >

この作品をシェア

pagetop