その視界を彩るもの




そんな風に眉尻を下げて視線を上げたあたしに気付いたイサゾーは、漸く現状を呑みこんだらしく。

この空気を作り出したのは他でもないイサゾー自身の筈だったのに、まるでその表情が「しまった」と言っているように思えて腑に落ちなくて。



「ど、……どうしたの?」

『……』

「イサゾー」




正直あたしには何がなんだかさっぱり判らない。

俯き睫毛を伏せるイサゾーを斜め下から見つめるものの、幾ら待っても返答は貰えなくて。


掴まれた腕は離されること無く、静寂が急くように駆け抜けていく。





『……ウイ、あのさ』




憂いを帯びた声音が琥珀色の中でじわり、溶けていくのを感じた。




< 118 / 309 >

この作品をシェア

pagetop