その視界を彩るもの
ちらりと視線を大判の鏡へと移す。
映し出されたあたしのカオ。最近入手したカラコンのおさまった瞳に、キワを彩るブラウンのジェルライナー。
シャドウはお気に入りのブラウン系のグラデカラー。
勿論マスカラは乗せてコテで修正済み。眉だって異常ナシ。まあいいか、こんなもんで。
今日の髪型はミックス巻きのそのままロング。
既に腰まで到達した髪はハニーブラウン一色だ。他三人みたいにメッシュとかは入れていない。
―――……あ。今更だけど、チーク忘れてた。
「………まず了解。トイレ」
「じゃーあたしも行く」
「アカネが行くならウチもー」
「ユカリが行くならあたしも」
ポーチにチークを放り込んで席を立ったあたしを見て、同じく腰を上げたアカネ。
それを見たユカリとアキホも同上。うわ出たよ、別に付いて来なくても良いのに。
だけれど、あたしがそれを口にすることはない。
だって、疑問に思う程度で特段困る訳でもないから。
ちらり、持ち上げた視線を直ぐに入口に向け直した。そして紺のハイソに包まれた脚をゆるゆると前へ。
思わず出そうになった欠伸を噛み殺す。
膝上20センチくらい?(測ったことがない)のスカートの襞を軽く整えつつトイレを目指す。
先を行くアカネたちの後ろ姿を見つめながら、カーディガンのポケットに双手を突っ込んで。
窓から覗く青空を見て平和だな、なんて。思うあたしは単なる阿呆だったのかもしれない。