その視界を彩るもの




意を決した彼女はどんどん彼らとの距離を詰めていく。

縮まれば縮まるほど、父とその女性の親密すぎる空気は痛いくらいに伝わってきたけれど。

でも、それでも。「もしかしたら」を捨て切れない彼女の気持ちは、十数年に及ぶ父親に対する信頼そのものだったから。



「―――お父、さ……!!」




あと数メートル。雑踏に紛れる娘の姿に最後まで父が気付くことは無かった。




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