その視界を彩るもの





「……あたしもごめん。ちょっと、寝不足でイライラしてた」


だから素直に謝った。そうした方がユカリの不安を除くには最適だと思ったし、何よりあたしの態度だってあからさま過ぎたから。

すると先ほどまでの陰った表情から一転した彼女は、メイクで繕った中でも眩しいほどの笑みで首を横に振ってみせた。











寝不足って本当にするもんじゃない。それが今日一日あたしが学校で頑張ってみて出した答えだった。

まあ、言うまでもないだろそんなことって言われたら口を噤む他ないけれど。


ぶらりぶらり、中身の少ないサブバッグを肩に掛けて歩を進める今は夕暮れ時。

珍しく放課後そのまま帰路に就くあたしの胸中は「すぐ寝たい今すぐ寝たい」と、そればかり。



一歩一歩脚を進めるたびに口を衝いて出るのは大きな欠伸。

その度にゆるダボなカーディガンで口許を覆うけれど、目尻に浮かんだ涙のせいで隠している意味は余り無いと言っていいだろう。





「………」





やっばい、ホントこれ日頃ロングスリーパーのあたしにはキツいって。



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