その視界を彩るもの
事実あたしの心臓はこれ以上ないくらい早鐘を打っていた訳で。
だって、もしかしたら梢ちゃんじゃないかもしれないし。他人の空似ってことも有り得なくはないし。
って言うか、それ以前にあたし梢ちゃんと面識無いし。
「………」
「………」
だから必然の如く少女との間に流れた沈黙が痛いほどあたし自身を窘めてきて。
いや、もう、謝って逃げちゃおう。マジ無理、この空気耐えらんない。
軽くパニック状態の中であたしがそう決意を固めて再度口を開きかけた、その瞬間だった。
「―――、勇兄の、彼女さん……ですか?」
「へ?」
「!」
いさにい。この子今、勇兄って言ったよね?
しかしながらその質問は全く以て見当違いだから。思わず間抜けな声音で返したあたし相手に驚くように肩を飛びあがらせた少女はやっぱり、きっと。
「や、やっぱり梢ちゃん!?」
セーラー服に身を包んだ黒髪の少女は目を丸くしつつも深く頷いてみせる。
やっぱり読モなイサゾーの妹だけあって、梢ちゃんは一際目を引く美少女だった。