その視界を彩るもの




あたしは昨日イサゾーから梢ちゃんの話を聞いたばかりだった。

だから梢ちゃんを目にして「もしかしたら」と思考を繋げることは難しいことじゃない。

だけれど、梢ちゃんから見てあたしは言うまでもなく赤の他人だ。




「………。 初さん、あの……怒りませんか?」

「へ?」



だから急に今までの快活さが嘘のように肩を窄め始めた彼女を見て、あたしは心底驚いた訳で。

うるうるとした瞳で赦しを乞うみたいに。

そう、例えるなら小さい子が親に怒られることを悟ったときのように。梢ちゃんは小さな声音であたしに問うてきた。




「わかんないけど、たぶん怒らないと思う……」

「た、たぶんですか!怒る可能性もあるんですね…!」

「わかった、わかったから!怒らないって約束する!」





美少女たっての必死な嘆願を無下にする度胸なんて持ち合わせている筈もなく、気付けば梢ちゃんを宥めるようにそう口にしてしまっていて。

内容もまだ聞いていないのに無責任だったかな、と思ったけれど。






「ホントですか!初さんありがとうございます!」





花開くような可愛らしくも美しい笑みが彼女の満面を彩ったことから、そんな微々たる後悔なんて直ぐに消え去ってしまった。



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