その視界を彩るもの
そして二人で肩を並べてテーブルの席に着く。
おやつ大好きな母親からしてみれば常識の範囲内に違いないけれど、普段あまり菓子類を食べないあたしにとってはこれは稀かつ貴重な時間だ。
軽く手を合わせてフォークを握る。
パンケーキの上で滑るように待機していたジャムの味が気になって、切り分けたそれを直ぐさま口に放り込んだ。
「………!」
「あらー、美味しいっ」
あたしが言いたかった言葉と母親の台詞内容がピッタリ重なる。
ビンの中身はイチゴジャム。焼き立てのパンケーキを引き立てつつ、ジャム自身も淡く存在を主張していて。
あたし的にドストライク。すごく好みの味と言えた。
「これ、本当に初の友だちのお母さんが作ったの?すごいわねぇ」
「………」
「初?」
隣で母が頻りに声を掛けてきていたことは知っていたけれど。
イサゾーは昔からこういう味に親しんできたのだろうか。
だとしたら、これを渡したら少なからず思うこともあるんじゃ……?
思考の波に自ら飛び込んだあたしは、フォークを含みながら瞑目する。
母親は軽く首を捻りつつ再度パンケーキに向かったようで。
イサゾーに渡すほうのジャムは、明日渡し忘れないようにとバッグの中に沈ませていた。