その視界を彩るもの
――――バタン、と。
あたしが姿を消してから暫く続いた沈黙は、他でもないアカネによって破られていた。
「……初ってばこわーい。ノリ、悪くない?」
少しだけ下げた眉尻でそう洩らす彼女は、きっと全て計算の上だったのだろうけれど。
そんなアカネを見て安堵したように言葉を発し始める彼らは既に、気付かない内に。
「あ、だ……だよな!俺もびびったー」
「あたしもあたしも!あーんなコワイ顔して出て行くことないのにねー」
「なんか気に障ったとか……?俺のせいかな」
「違うっしょ絶対!あの子マジ気まぐれだからさぁ」
――――……自分でも気が付かない内に。
アカネの手中にある駒へと成り下がっていたのかもしれない。